【レビュー】十三機兵防衛圏【クリア感想】

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ゲームレビュー
タイトル:十三機兵防衛圏
初リリース日:2019年11月28日
開発元:ヴァニラウェア

長編のアドベンチャーゲーム。

SF要素多めで、謎が謎を呼ぶ先が気にる展開でした。

クリアまで23時間。

ネタバレがあるレビューとクリア感想です。

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総合評価

評価:名作

良くできたSF作品。

アドベンチャーパートでの最後までオチを読ませないで走り切る展開の上手さは素晴らしい。

バトルパートで機兵と敵がアイコン表示なのが残念なポイントですが、機兵を強化すれば爽快感のある戦闘が楽しめます。

アーカイブスで本編の考察をすると更に面白みが増します。

クリアしてからが本番といわれるのも納得です。

アドベンチャー(追想編)
気が付けば2020年。

1980年代ってどんな時代だったのか、今となっては思い出せません。

そんな中、このゲームはビデオの貸し借り、ブラウン管テレビ、怪獣映画、スケ番などなどキーワードてんこ盛り。記憶を刺激する仕掛けを素直に楽しむことができました。

個人的に一番刺さったワードは「伝言ダイヤルサービス」

関ヶ原編のワンシーンで、このワードを見た時、自分が遠い昔に伝言ダイヤルに電話をかけている映像がフラッシュバックしました。

完全に忘れていた80年代の空気感を少しだけ思い出して懐かしい気持ちになりました。ありがとう、ヴァニラウェアさん。

バトル(崩壊編)
体験版では物足りなさを感じたバトルパートでしたが、機兵の強化で戦闘は派手になります。大多数の敵を一斉に撃破できるようになると快感でした。

ただ、アドベンチャーパートのロックに関わっているので、話の続きが気になって仕方ない身としては早く終わらせたい一心だったというが正直なところです。

アーカイブス(究明編)
こんなの必要なのかと素朴な疑問を持っていましたが、一番大事でした。むしろこっちが本編くらい重要な情報がぎっしり詰まっています。

急いでクリアしたので色々な情報がごっちゃになったまま終わってしまいました。アーカイブイブスで時系列を見直しながら考え直すと見落としに気づくことが何度もあって楽しくなります。

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ネタバレありのクリア感想

13人の主人公

鞍部十郎
426の記憶、自分自身の過去の記憶、それに加えて柴Q太郎が意識にいるというカオスな状態。男子高校生の日常が後半から一転。ホラー映画に変わりました。

冬坂五百里
のほほんとした女子高生ライフですが、最後は関ヶ原の背中を押してあげるという重要な役割がありました。

網口愁
因幡深雪にテレビから助けを求められる場面は実にSFらしくて好きなシーン。また、井田先生との直接対決は燃えました。

薬師寺恵
十郎が大好き過ぎて周りが見えてないようですが、比治山に焼きそばパンをあげたり、三浦にハンバーグを作ってあげたりと面倒見のいいヒロインでした。

比治山隆俊
焼きそばパンの人。小銭拾いしていた印象が強過ぎて本編の内容が思い出せません。2188年のオリジナルが沖野君といちゃついている映像記録には笑わせてもらいました。全くブレない二人が好きです。

鷹宮由貴
スケバン刑事。426を追い詰めたり、南奈津乃を救出したりと印象的な場面も多かったです。

関ヶ原瑛
濡れ衣請負人。一周回ってお気に入りになりました。一番コアなSF劇をしていたのは関ヶ原編のような気もします。

Dコードを仕込んだ裏切り者疑惑、森村先生殺害疑惑と序盤から重いものを背負わされてしまう不運っぷり。完全に詰み状態からスタートするというのはスリルがありました。

2188年のオリジナルが森村博士を殺した仕返しを2000万年後にクローンが受けるのは因果というより、とばっちりです。森村博士もこんな形で復讐するとは思いもよらなかったでしょう。

南奈津乃
体験版では違う時代に置き去りにされて死にそうな気がしていたので、生きて帰って来れただけで十分良かったです。BJとのコンビも好きだったので、機兵起動の場面ではうるっと来ました。

三浦慶太郎
比治山の焼きそばパンに対抗してハンバーグを推す場面が好きです。南奈津乃とは2188年のオリジナルから変わらない鉄板ペアなので安心感があります。

時代や環境、自分自身の姿形に関係なく南奈津乃と一緒にいるところが運命的でロマンチック。また、そういった面でも比治山と張り合えるのが面白いです。

如月兎美
2025年から何とか戻れたと思って安心していたら、沢渡美和子が当時の記憶を失っているという展開は薄気味悪くて怖かったです。

緒方稔二
同じ場面を何度もループするだけですが、違いを探すのが楽しくて結構好きなパートでした。あと、制御キーを持っている南奈津乃が可愛いです。

東雲諒子
プロローグを買った時から、推しは東雲先輩でした。東雲編がどういう展開になるのかを楽しみにしていました。

2188年のオリジナルの記録から碌なことにはならないだろうと感じていましたが・・・予想通り井田先生を撃ちましたね。本当にやっちゃうのが先輩のすごいところです。

ワガママでハタ迷惑な先輩ですが外野から見ている分には楽しかったです。

郷登蓮也
森村先生だと思い込んでいた千尋が、森村博士だったことに気付いてしまった時、どんな気持ちだったんでしょうか。幼稚園の制服を用意するくらいノリノリだったのですから、結構ガッカリしたのかもしれません。

東雲先輩と同じで、周回組の人間を好きになると悲劇が起きるというのは作中の一つの法則に思えます。

周回組のスレ違い

井田鉄也と因幡深雪
15人の新人類候補者たちの初々しい恋愛も見ていて楽しいものでしたが、周回組の重い愛も印象的でした。

特に印象に残ったのは、1週前の井田鉄也とAIの如月兎美(因幡深雪)

浮気性の遺伝子を持つ井田鉄也ですが、如月兎美の復活のために脇目を振らず全力を尽くします。

AIの如月兎美(因幡深雪)は機兵汚染時の強制転送でテラフォーミング先の惑星上空にある司令船に送られます。

彼女は一番頼れるのは井田だからという理由でメッセージを託す相手に彼と同じ遺伝子を持つ網口愁を選びます。

上空から現実の世界を見て施設の稼働限界に気付いた因幡深雪ですが、地上で仮想現実に囚われたままの井田先生には話が通じません。

これ以上周回できないことに気付かない井田の努力は空回り。最後は、鷹宮由貴を救出しに来た網口愁に「俺は女の子を道具にしたりしない」と言われた挙句殴られます。

残念なことに、当の網口はエンドロールで浮気癖が発覚して株を下げます。モーションをかけた相手がよりによって東雲先輩。冗談で済むのかという不安が残ります。

一方、井田先生は因幡深雪と和解。もう一度やり直す道を選びます。研究室での「君がいなきゃ・・・意味がないんだ」という言葉が真実だったことを再確認できました。

実はこっちの方が本気で一途だったという皮肉なオチがスパイスになっています。

2月16日に行われたプレミアム・トークイベントでは、エンドロールの井田先生は因幡深雪に叱られてセクターの復旧に協力しているという話があったそうです。

セクター復旧まで再会はお預けと言われても黙って従っている井田先生を見ると、かなり厳しいお咎めだったのでしょう。因幡深雪が説教しているシーンは想像するだけでも面白い絵です。

426と森村先生
エンドロールの締めは2週前の426(和泉十郎)と森村先生(森村千尋)でした。十三機兵防衛圏の影の主人公ともいえる二人。

この世界でただ一人、2週分のループ記憶を保持している426。15人の新人類たちがループから脱出できるように奔走します。

一方、森村先生は426の記憶と共に静かに暮らしながら滅びることを選びます。イージス作戦を進めながら、鞍部十郎に426の記憶を移すことに専念します。自分の手で426を始末したのが原因で方向性を見失ってしまいました。

1周前でセクター0のバックアップからの再生になってしまった森村と2週分の記憶を保っている426。その記憶の差が二人の運命を分けてしまいました。

文字通り目線の高さが原因でスレ違った井田鉄也と因幡深雪。記憶の違いが原因でスレ違った426と森村先生。

両想いなのに上手く行かない周回組の悲劇が物語を引き立てています

緒方憲吾の復活計画

箱舟計画阻止
2188年の箱舟計画では緒方稔二の肉体で緒方憲吾が復活する予定でした。計画の真の意図を知った郷登蓮也はこれを阻止しようとします。

探査機を止めて箱舟計画を中止させることはできなかったので、東雲博士が遠隔でDコードを仕込んでクローンたちを目覚めさせないようにさせます。

緒方憲吾が復活できなくなった直接的な理由は分かりません。ただ、緊急脱出で18歳の段階でポッドが開いたことで乗っ取りのタイミングより前に出られたことが大きいのかなと思います。

300回ループしているので、緒方稔二の肉体を奪ったものの途中で資格を失った可能性もあるでしょう。

いずれにせよ、東雲博士がDコードを仕込んだことで緒方憲吾の復活計画は頓挫したことになります。

個人的には後半で緒方稔二が体を乗っ取られるシナリオを予想して進めていたので、そうならなかったことに安心したり、少し残念だったりという複雑な気持ちがありました。

制御キー

緒方稔二編では、制御キーがあれば怪獣を止められるという沖野司の仮説を元に、緒方が鍵を探します。

制御キーは南奈津乃に移っているという話があって、後半の伏線なのかと思い込んでいたら、何もなく終わってしまいました。

アーカイブを見返して分かることは、426(2週前の和泉十郎)が1週前のアクムの場面で、制御キーを破壊する方法を既に試していたということです。

制御キーは所有者を殺すと次の候補者に移転します。結局、15人の候補者全員を始末する必要があるので不可能に近いミッション。

この方法で怪獣を止められないことを426は知っているので、制御キーを持つ南奈津乃のためにも黙っておいてくれと緒方を説得したということなのでしょう。

渚のバカンス

バトルパートの第2エリア渋垣市の最終面(WAVE2-10)は印象に残るバトルパートでした。

網口愁の「それならさ・・・君がいる間、歌を聴かせてくれよ」というセリフからの「渚のバカンス」。

戦闘終了で歌が途切れる演出は心細くて切ない気持ちが残りました。ステージ4の総力戦も良いですが、一番印象に残ったのはこの戦闘でした。

この網口のシーンと重ねて、エンドロールで井田鉄也が「通信が切れるまで君の歌が聞きたいな」と言う演出はオシャレだなと思いました。

サウンドトラックでフルが聞けるようになるみたいなので、楽しみです。

AIの比治山隆俊

1周前でAIになっているのは如月兎美、玉緒さん、三浦慶太郎、比治山隆俊の4人。

比治山がAIになっているという話は本編ではちょこっとしか出てこないので見逃しやすい要素でした。

2月16日に行われたプレミアム・トークイベントでAIの比治山について言及があったそうです。

1週前、AI比治山は19番機兵に搭載。記憶の劣化が激しかったので、自分を消去してAI三浦を支えてほしいと沖野に伝える話。そして、今周回、三浦慶太郎がAI比治山が宿っている19番機兵に乗るといったエピソードがあったものの削ったという話でした。

AI比治山のエピソードが影が薄いのい理由は、元々構想はあった部分がかなり削られているのが原因のようです。

1945年組が前に出過ぎると熱血な展開になり過ぎてしまうので、作品のバランスを取るためにカットしたのかなと思いました。

ミスリードの使い方が上手なSF作品

オチを見てみれば仮想現実の話。結末自体に目新しさはありません。

十三機兵防衛圏の良いところは、そこに至るまでの箱の開け方の工夫にあると感じました。

序盤はロボットが登場する近未来設定、ゲートを使ったタイムリープなどのSF設定ごちゃ混ぜでどういう話になるのか読めません。

巧妙だったのは中盤。網口がバイクで町の端に辿り着いた場面。あの話でコロニーのような宇宙船の話だとプレイヤーを一旦納得させてしまうところです。

BJがタイムトラベルは理論上あり得ないと言う時期と近いこともあって、宇宙船のセクター内の話で確定だなと安心してしまいます。

仮想現実での出来事だとハッキリと明示されるのは最後までロックされている郷戸編。

勘のいい人ならもっと早くに気付くかもしれません。如月編で沢渡美和子の記憶がないというエピソードなどでも推測できますが、それまでのミスリードが効いているので中盤でオチを読み切るのは難しいでしょう。

典型的なSF要素を複数仕込むことでオチを読ませない。それっぽい話を見せてプレイヤーを納得させてしまう。時系列の不明なエピソードを混ぜてプレイヤーを混乱させる。

ミスリードの仕込みの上手さ

これがSF作品として十三機兵防衛圏が良くできていると感じた理由なのかなと思いました。

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PS4じゃねーか